1.概 略
ドイツのハノーバー市で隔年開催される大規模な農業機械見本市「Agritechnica」に併せて、農業機械エレクトロニクスに関する研究会が開催された。トラクタ作業機の制御・通信のための国際規格ISO 11783と題したこの研究会は、ドイツのLAV(農業機械製造社協会)主催によるもので、同規格の策定を進めるISO/TC23/SC19/WG1(表1)の協賛を得て、各国から60余名の出席者を集めた。
表1 ワーキンググループの位置づけ | |
ISO(International Organization for Standardization) | |
│ | |
TC23(Technical Committee 23) | |
│ Tractors and machinery for Agriculture and Forestry | |
│ | |
SC19(Sub Committee 19) | |
│ Agricultural Electronics | |
│ | |
WG1(Working Group 1) | |
Mobile Machines | |
・ISO 11783規格の策定 |
2.研究会の内容
この研究会では、2000年8月を目標に現在も策定作業が進められている農作業機械用データ通信規格ISO11783に関して紹介された。これは、農用トラクタと直装、半直装、けん引式及び自走式作業機のための CAN(Controller Area Network)によるシリアルバスシステムを規定するものである。
ここでは、各種のセンサ、アクチュエータ、制御機器、データ蓄積や表示装置等の間のデータ転送の書式及び理論を定めており、この標準化されたネットワークにより異なるメーカーの機器同志の相互接続が可能になる。特に、精密農法技術の実用化のためにも、電子的な通信プロトコル標準化の必要性が高い。即ち、基地局や農家コンピュータの「管理情報システム(Management Information System)」、 作業機、オペレータの間のコミュニケーションの確立・標準化は、精密農法実現のために避けて通れない問題である。規格の各章はOSI(Open System Interconnect)階層モデルに沿って記述されている(表2)。
研究会では、参加者がISO 11783規格を実施するのに必要な基礎的な知識を得られるように、 ISOワーキンググループ委員から、各章ごとにその概略と具体的な内容について詳細に紹介された。
表2 ISO 11783規格の構成 (注:1999年3月現在) | |
第1章 | 規格全般について(WD) |
第2章 | 物理層(DIS) |
第3章 | データリンク層(IS) |
第4章 | ネットワーク層(DIS) |
第5章 | ネットワーク管理(DIS) |
第6章 | 仮想端末(WD) |
第7章 | 作業機メッセージとアプリケーション層(WD) |
第8章 | 動力系メッセージとアプリケーション層(WD) |
第9章 | トラクタECU(WD) |
第10章 | タスクコントローラと管理情報システム(WD) |
第11章 | データ・ディクショナリ(WD) |
(注)括弧内は現時点の状況 IS:International Standard(規格として確定済) DIS:Draft International Standard(公開中) WD:Working Draft(推敲中) |
3.研究会の報告から
図1 仮想端末の例(ME社) |